禅僧の間に行われていた印が移って来た

かように今川氏の一門の用いた印は種々であるが、氏親の最初の印を除いた外、印の形様は、総べて印文を輪郭に囲んだもので、印文以外に動物の形像を交える等のことを見ない。謂わば単調である。この点に於いて、既に説いた北条、武田、上杉諸氏始め、東国地方諸大名の印の中にあって、一つの特色を見ることができる。印の沿革から云えば、当時の武家の印は、禅僧の間に行われたものから移って来たのであるが、この禅僧の印は、その字諱を印文として表すのが通例であった。とのことです。