個人である官人から出した牒

官司の間において、所管被管の関係にある場合、下位の者から上位の者に上げる文書の式は解であって、これについては公式令に規定が示してある。ここにいう牒式は、そのような官司の間におけるものではなく、個人である官人から出す文書のことである。

〔五〇〕は奈良時代のもので、大宅朝臣船人が、病気が重くなったためなどの理由によって、その所有していた家地を東大寺に進納するために、出雲国国師務所に出した文書である。書き始めも書き止めも謹牒上という言葉を用いて公式令の示すところと相違しているが、これは、特に鄭重な意味を表したものであろう。国師務所に出したのは、各国の国師務所が、国師即ち一国の仏寺僧侶に関したことを取り扱う僧官の執務するところであったからである。とのことです。