充所を書かない、解

解は官司において被管から所管に上げる文書である。符と逆である。解には官司に準ずる所、若しくは諸家諸人から、その上に位する所に向かって上げる文書もあった。

第一四図 下総国司→太政官 

国司太政官の被管だから、解を以て上申したのである。下総国香取郡内に二人の奴婢が逃れくだっていた。郡司が調べたところ、奈良の法華寺から逃亡した由であった。このことを郡司から国司に解状をもって報告したので、これに基づいて国司からもこのことを中央の太政官に報告したのである。この奴婢は官賤といって、朝廷から寺院等に与えられていたものであるから、その逃亡のことは厳重に取り締まる必要があった。その人体を精確にするために、生年を始め、黒子のことも記載してある。

文字が比較的小さく書いてある上に、印がたくさん捺してあるので文字を読みづらい。捺してある印は「下總國印」で22顆に達している。字面に余すところなく正確に捺してある。当時の公文に捺した場合は、皆このように捺したのである。当時如何に公文書が正確に作られていたかを知ることができよう。

解には充所を書かない。文書の性質から書き表さなくても当然判った筈であったが、またこれが下位の役所から上位の役所に上げる文書の儀礼ともなっていたものと思われる。とのことです。