譲状の外題安堵

さてこの譲状の端に別筆で四行大書してあるのは、将軍家の外題安堵、或は外題安堵状とも申すものである。外題とは当該文書にその申立に対する指令を記したものをいう。元来御家人は生前にその所領を男女の子息等に処分して置くのが当時の慣習であった。若し処分を行わないまま死没した時には、その所領は未処分の所領として一定の法規に従い、幕府の処置の下に子息等に配分されたのである。普通に生前に譲与してその没後、或は生前中でも、剰余を受けたものが其所領を実際に進退することになると、安堵申状というものに、譲状或はその所領に関係した証文類を添えて幕府に提出し、所領襲領の認可を請うのである。

 この申請を受けた幕府は、申請者の襲領した所領の附近に同じく所領を持っている御家人等に、申請者はその所領を現在知行しているか、その知行に対して異議を申立つるものは無いかということを尋問する問状なるものを発する。其に対して現在知行している、意義を申す者はないとの返事が達すると、愈襲領を認可する意味を書いた下文、或は上述した下知状を発すのである。之を安堵下文又は下知状と申している。これが安堵の手続きの概略である。とのことです。