写経所から出した啓

右両様の言葉を持っている文書の間にも、或るものは公の意味を多分に、或るものは私の意味を多分に持っているものとの差異がある。説明の順序としては、前者を先に、後者を後に挙げることとする。

(略)

之は写経所から出した啓であって、同所から出す一種の公の文書と認むべきものである。日附の下に署名を加えている者は、写経所の役人と思われる。かようにこの啓は、既に述べた解とその書式に於いて異なるところが無い。なお之と同じ形式で、唯書止めに「以啓」の如き例文を以て終わっていないものもある。なお更に、始めに「謹啓」と書き、書止めに例文が無く、又之と反対に書止めに「啓」と例文を書くのみで、一見何処から発したものか不明の文書もあるが、先づこの種の啓に準ずべきものと見てよい。とのことです。