「信」の一字と両虎の絵を組み合わせた信虎独特の印

この印判状は、正に此部類に属するものである。充所は本文の内容に依って自から現れている。袖に捺してある印は、信虎の上の「信」の一字と、両虎の絵とを以て、信虎と表したのである。かように文字と絵とを組み合わせて実名を表した印は、先づ信虎独特のものと云ってよい。又年号は所謂異年号で、天文九年に当たる。天文九年と云えば、信虎の晩年であるが、信虎は前に述べた如く、大永五年の文書に「信虎」の二字を印文とした朱印を捺し、次いで正圓の中に獅子を書いた朱印、更に又「信虎」の二字を印文とした鍔形の黒印を用いている。文書の伝わる割合に印の数は多く、印の形様に極めて興趣の深いものがある。とのことです。