奈良平安時代と異なる鎌倉時代以降の過所

過所は、既に二箇所に之を挙げて説いた。公式令にその書式が示してあるが、奈良平安両時代を通じて、その実物の伝わるものを発見し得ない。尤も朝野群載に、その一例が挙げてあるが、之とても書様即ち書式を示したに過ぎない。又右に説いた過所は、諸関を通過する人々の身元証明書とも申すべき公文であった。然るに実物の遺るものとして上述した鎌倉時代以降に於ける過所は、関所料免除の特典を与える為目の文書であって、奈良平安時代の過所とは、全くその意義を異にしている。それにも拘らず過所と称してはをるが、前掲鎮西探題の過所の端裏書に見る如く、大抵過書と書いている。ここに於ては、本義に基いて、過所の文字を用いることとする。とのことです。