北方・南方が位署を加えた六波羅探題の施行状

この施行状の書式を前項のものに比べると、前項のものは差出所が日附の次行にあって、而して上部に書いてあるのに対して、之にはそれが下部に記してある。ここに相違した点が現れているが、之は差出者の位置如何に依って、位署が上下その所を変えたものであって、同じく下文の変形と見るべきである。

右に挙げた施行状は、北条重時一人が位署を加えている。これは当時北方として重時一人が探題であったからである。〔一八一〕に挙げたものは、弘安三年九月五日、北条時宗東福寺の圓爾(聖一国師)に加賀熊坂庄の一方を寄進し、これが寄進を認可した下文を施行する為めに出した六波羅の施行状、之には北方北条時村、南方同時国の位署が加えてある。とのことです。