印を捺した文書でも、書札の礼法を守っていた

而してその書止めに「謹言」と記している。ふつうの書札類では、「謹言」の上に「恐々謹言」、更に「恐惶謹言」と次第に鄭重な書き表し方が用いられたが、この形式に属する印判状は、日附に年号が記してあり、而も差出所が印判のみであって、そこに何等鄭重さが表れていないため、書止め計り鄭重にしては、日附と差出所と書礼上相応しくない形式となる。然しこの書止めに多少なりとも鄭重さを表そうとして、「謹言」以上の敬語を記したもので、この部類に入る印判状は余り多く行われていなかったようである。印を捺した文書でも、書札の礼法を守っていたのである。とのことです。