古文書分類の嚆矢、松平定信の古文書部類

水戸の史館、加賀の前田家についで古文書の保存に功績のあったのが松平定信です。

定信は、古物が散佚するのをおそれ、集古十種を刊行しました。古文書については、古文書部類八十二冊を編輯しました。これは文化年間白河城炎上の際に焼失したと伝えられていますが、和学講談所に伝わった写本が帝国図書館に架蔵されている、とのことです。八十巻付録二巻からなっていて、

宸筆・綸旨・勅宣・位記・口宣・院宣・令旨・御内書・御教書・下文・庁宣・判物・補任・公状・牒・解状・目安・申状・召符・問状・下知状・打渡・免許状・請文・禁制状・掟・施行状・遵行状・壁書・注進状・寄附状・願文・感状・過書・譲状・證状・起請文・誓詞・契約状・戒書・遺状・注文・免状・坪付・次第書・覚書・沽券・勧進状・日記・縁起・釈書・書牘(しょとく、書状)・雑

の53種に分類し編輯されています。

焼失しなかった原本は、集古十種に次いで上木(じょうぼく、出版すること)しようと企てられたものであるから、少なくとも影写してあったものだろう、とのことです。←ここのところちょっと分かりませんでした。

ここで注目すべきは、古文書を分類していることであり、古文書の分類の嚆矢であろうと述べられています。

定信は、かつてその領内に本拠地を持っていた結城氏の功業を顕揚するため、文政元年史臣廣瀬典をして白河古事考を編輯せしめましたが、そのとき採訪した古文書を編輯して白河證古文書と称しました。水戸の諸家文書の中のものと、伊勢津藩藤堂家編輯の有造館本結城文書と相並ぶ結城氏古文書集となっています。