2021-04-01から1ヶ月間の記事一覧

手継の證文から重書の譲状へ

第三章 第四節 第二項 古文書の価値の変化 です。 室町時代の社会の変動で武家の手継の證文の効力が失われ、不知行の文書が多くなったとのことです。 これと並行して権門勢家社寺の重書も同様となりました。 このような重書證文は、紛失があると紛失状が作ら…

中世以前の古文書の活用

第三章 第四節 歴史の資料として活用に依る伝来 第一項 中世以前に於ける古文書の活用 です。 日本書紀・続日本紀・日本後紀・続日本後紀・文徳実録・三代実録の六国史はいずれも古文書を史料として活用しており、特に続日本紀は、詔勅宣命のような貴重なも…

弘仁・貞観・延喜の三代格を伝える類聚三代格

第三章 第三節 典故の資料として活用に依る伝来 です。 弘仁・貞観・延喜の三代格を今に伝える類聚三代格、格につぐ類聚符宣抄、惟宗允亮の政事要略、三善為康の朝野群載の四部がまず挙げられています。 藤原明衡の本朝文粹、これにつぐ続本朝文粹は、朝野群…

行成が、道風が、―墨蹟の尊重

第三章 第二節 墨蹟の尊重に依る伝来 を読んでいきましょう。 前節でみた個人の遺札の裏を料紙として使うことも、墨蹟の尊重の一つといえるとのことです。 正倉院に伝わる王羲之の書法廿巻も墨蹟を尊重したいい例です。また世尊寺行成が小野道風の墨蹟を尊重…

料紙の表と裏

典籍の料紙 (表)平安時代末期の延喜式 (裏)寛弘年間の讃岐国の戸籍など (表)公任自筆の北山抄草稿 (裏)公任宛の文書など 日記の料紙 (表)平信範の兵範記 (裏)源頼政・平重盛の消息など (表)勘解由小路兼仲の勘仲記(裏)蒙古襲来・異国征伐の…

古文書のリサイクル

古文書のリサイクルには、二つの方法があります。 一つは、古文書を漉き返して紙を再製すること。 もう一つは、漉き返さずに以下のように利用すること。 写経聖教の料紙に利用すること。 典籍の料紙に利用すること。 日記の料紙に利用すること。 文書の料紙…

古文書をよむ!改行マークをつけただけですが・・・

「第一節 料紙の利用に依る伝来」です。冒頭に「第一 料紙としての利用」とありますが、続く第二や第三が見当たらないようです。うーむ。 本節最後まで繰ったついでに、第五図(p.75)を先に読んでみましょう。 第五図では金澤貞顕書状が写真で載せられてい…

応用上の価値とはなにか?

さて、「第三章 応用上の価値に依る古文書の伝来」に入っていきます。はじめに見取り図を・・・ 第一節 料紙の利用に依る伝来 第二節 墨蹟の尊重に依る伝来 第三節 典故の資料として活用に依る伝来 第四節 歴史の資料として活用に依る伝来 第一項 中世以前に…

東大寺、東寺、金剛峯寺に伝わる文書の大部分は?

ふー。ようやく第二章第二節を抜け出せました。 次は「第三節 永続的効力に依る古文書の伝来」です。 はじめに手継の券文が、次に武家の所領の譲与について、山内首藤家と土佐香宗我部家の文書が挙げられています。 所領を最初に拝領したときに授かった文書…

紛失状の四つの実例

説明ばかりになったので、少しじっくり文書と向き合いましょう。 紛失状の一は、紀姉子という老女と養子のあいだでトラブルがおき、養子が質にいれた文書は證文といたしがたい旨を示すために作られたものでした。 紛失状の二は、河内国金剛寺の阿観が大事に…

紛失状には四つの場合がある

平安時代から室町時代にかけて「紛失状」と呼ばれた文書があったようです。次の四つの意味があったとのことです。 一、文書は存在するが、その存在を否認する為めに新規に文書を作つた例 二、文書は存在するが、その存在を否認する為めに、案文に正文同様と…

重要な文書なので作った案文、重書案

第四 文書の控として保存する場合 を読んでいきましょう。 どうやら文書を薩摩から関東に持参するに際して、途中で紛失することを恐れて、この案文(p.29)が作られたということのようです。ただし幸運なことにこの案文に対する正文も島津家文書のなかに無事…