古文書と印刷との関係を知る貴重な史料、度縁

文書が版刻によって作られたことは実に異数と云わねばならない。今日遺存する古文書の中、この度縁を除き、特に近世以前、他の種類の文書で版刻のものは、殆んど存在しないようである。古文書と印刷との関係を知る上に極めて尊い資料と云わざるを得ない。従って印刷史の資料としても注目すべきものである。平安時代に於ける経文摺写のことは日記等に散見しているけれども、その実物の遺るものは極めて少く、正倉院内聖語蔵尚蔵の寛治二年刊行の成唯識論の如きは実に珍奇なる資料とすべきである。かように印刷史を語る遺物の少い時代に於て、この度縁の一般史料としての価値は実に大きい。但し、度縁を版刻に附したことは、我が国の発明では無く、当時支那宋朝に於て盛んに行っている。この規式が我が国に伝来したことは云うまでもない。とのことです。