聖一国師の度縁

右に挙げた度縁は版刻であるが、他に伝わるものとしては、承久元年十月廿日附、圓爾(聖一国師)并に弘安九年十一月八日附、天岸慧廣(佛乗禅師)の度縁二通あり、何れも版刻である。然し此両通の形式は同じであるが、此等と先の慶清のものとは大いに形式が異っている。即ち〔二〇八〕は圓爾の度縁である。「 」を以て囲んだ文字のみが筆書から成っている。承久元年十月の六字一行を中心にした紙面に「皇帝官印」の四字を印文とした朱印一顆の陰影を拝する。又同日附で〔二〇九〕の如きもある。同じく「 」の中が筆書である。版刻の部分は両者全く同一即ち同じ版木から摺ったものである。後のものには印は捺してない。便宜後のものを図版に示すと上の如きものである。次に〔二一〇〕は慧廣の度縁、「 」は同じく筆書したところを示す。版刻も筆書の書式も、先の圓爾のものと略々同じと見てよい。唯慧廣のものには印が捺してあるが、重郭方二寸五分の「太政官印」、即ち外印である。とのことです。