摂政九条兼実の南都寺院復興の願文

次に時代が降って造仏願文の一例として、左の如きものもある。

(略)

この願文は、摂政九条兼実興福寺南円堂を再建し、大仏師康慶をして不空羂索等の仏像を造らしめ、其胎内に仏舎利、書写の経文を納めて供養した時の願文である。料紙は紺紙を用い、罫線を引き、自筆にて金泥を以て書いたものである。当時に於けるかかる願文の標本として貴重なものであり、又兼実の筆跡を見る上にも、なお平氏に依って消滅した南都寺院復興資料としても、極めて重要な史料と申すべきものである。とのことです。