他の一は特殊な文書であるが為に、他の文書と明らかに識別するように、一つの印を捺して充分な上に、更に別箇の印を必要としたことである。前記御室御供米の過所は之に当たるものである。かように特殊な文書には、自然それに専用の印が生じてくるが、その起こりの原因がこの特殊な文書に二種の印を捺したところにあるように考えられる。然し総じて二種の印を一つの文書に捺す先例は、禅僧の文書にある。即ち諱と字とを印文とした両印を同一文書に捺している。それがそのまま右に述べた武家の文書に及んだとは考えられないが、右に記した二様の意味の中、先に挙げた印影の種類を増すと云う意味は、これと何か脈絡があるようにも思われる。とのことです。