上卿の奉ずる口宣

なお、上記の例に合わないものとして、伝宣草のなか、内記に下す宣旨の一例に、

 応長元年十二月廿九日 宣旨

   藤原朝臣合長

     宜叙従五位下

          権中納言兼右衛門督藤原判奉

のごときがある。これは職事の口宣の書式を具えているが、権中納言兼右衛門督は大宮季衡に当たり、この官職では季衡は当時蔵人頭であるはずはないから、上卿としてこれを出したものと見るべきである。これと同時に季衡に当たる人は、

  口宣一紙 藤原合長/叙爵事、奉入如件、

        十二月廿九日        右衛門督判

       大内記局

のごとき消息を以って、大内記局に伝宣している。口宣の中に、上卿の奉ずる例のあったことは、特に注意すべき事実である。とのことです。