平安時代からの文書を伝える久利氏

なお前掲石見国司庁宣について少しく述べておこう。そもそも国司が郷司職を補任している史実は注目すべき事象であると思う。かくのごとく国司が郷司職あるいは郡司職を補任したことに関する文書は、前記のもののほかに、安芸国佐伯郡厳島の神主、あるいは大隅国の禰寝氏等のものが現存している。これらの文書によって国司と諸国の豪族との関係を究めることは興味ある題目であろう。

久利(くり)郷司に補せられた久利氏は、鎌倉時代の文書は伝えていないが、建武中興以後から武家の家人として古文書を伝え、次いで大内、毛利、周防岩国の吉川三氏に仕え、今日に至って遠く平安時代からの先祖相承の古文書を伝えている。これは古文書の伝存、また家系尊重の歴史を考える上にも大いに注目すべき事実である。とのことです。